エクアドル旅行記

トップページ -> エクアドル旅行記 -> 旅行記一覧

クエンカ・キト バスの旅

 6時20分。仕事に出るのと同じ時間に家を出る。東の空は黒い雲に覆われているが所々朝日が透けて赤く染まっている。日曜日だからか走っている市内バスをほとんど見かけない。仕方が無いのでバスターミナルまで約20分歩く。陽が少しずつ昇っているのだろう雲に映された赤は少しずつ薄くなる。空には厚い雲といわし雲が半分半分の割合で浮かんでいる。空を見上げて歩いていたら雲が陸地に思えてきて自分が海の底を歩いているような変な気分になった。

バスいつもは賑わっているバスターミナルだが日曜の早朝だからかあまり人がいない。呼び込みの男が「グアヤ!マチャラ!」と町の名前を叫んでいる。前日にキト行き7:00発のバスはどこの会社か調べておいたのでそのオフィスへ直行。10ドルでチケットを買いバスへ。

バスは私の他に乗客が3人だけで空席が目立つ。バス発着所も人がまばら。聞こえるのは「キトー、グアヤー」と客を呼ぶ声くらい。隣のバスの上では荷積みをする男の姿が見える。物売りが数人、出発前のバスに乗ってきて売り口上を並べてそれが終わると去っていく。暇つぶしの為に新聞を購入。日付を見て今日が終戦記念日だと気付く。日本ではどのようにメディアで取り上げられたんだろうか。なんて考えていたら数人慌しく乗り込んできてバスがゆっくりと動き出した。いざキト!と思ったらいきなりエンスト。。。10時間の長い道のりをこんな運転手に任せるのか。。。無事に着く事を祈ろう。

途中で人を拾いながらバスは北のアソーゲス市へ向かう。クエンカ・アソーゲス間は新道と旧道の二つ道があり前者はかなり快適。後で聞いた話だが新道は崖崩れの為不通、なのでこのバスは旧道を使った。所々アスファルトに穴の開いていて少し揺れる。窓からは青い空に緑に包まれた木々、まばらに人家も見る事ができる。いつも通り40分でアソーゲスの小さなバスターミナルへ到着した。そして人を乗せすぐに出発。

山道の景色アソーゲスの街並みを右に見ながらバスは進む。この町を過ぎると難所のカニャールの山道へ入る。アソーゲスから数百メートル、大体3200メートルかそれ以上まで登ってくねくね曲がった舗装の状態の悪い道が続く。ここへ入ると小刻みにバスが揺れ始め、字をうまく書けない。乗り物に弱い人はここを通るのが厳しそうだ。実際、私の斜め前に子供が座っていたが山道へ入りすぐにゲロを吐いていた。車掌がその子の為に窓を開けたが冷たい風が入ってきて寒い。標高が高いから気温も一年中低いのだ。

途中インガピルカへの拠点の町カニャールやタンボ、そして名を知らぬいくつもの小さな集落を通り過ぎる。家はコンクリかレンガで出来ていて思っていたより立派。歩いている人は黒いフェルト帽が印象的な民族衣装を着ている人が多い。バス通り標高3000メートルはあるはずだがそれを感じさせない高い山と落ちたらたらまず助からない様な切り立った崖に挟まれた道を進む。空は高く青く陸は乾いて茶色い。植物は生えているが枯れたような茶色なのだ。そんな所でも羊、ロバ、牛などが放牧されている。

初めてこの道を通ったのは2003年8月だったがその時と比べるとだいぶ道の状態が良くなっていた。あと数年したらこの山道もかなり良くなるんじゃないだろうか。

山道クエンカを出発して約3時間走った所で突然バスのエンジンが停止。数分で復活して走り出したが更に10分ほど走って再度停車。どうやらバスの調子が悪いようだ。「いつ着けるのか・・・」とぼやく乗客達。後からクエンカを出発したキト行きのバスに抜かれ踏んだり蹴ったり。エンジンはかかるのだが回転数が落ちると止まってしまう。20分停車してやっと再出発。後で自動車に詳しい友人に聞いたらこの現象はフィルタに水が溜まった時に起きるとの事。ちゃんと整備していれば防げるらしい。綺麗なバスだったんだけどしっかり整備してないのね・・・

クエンカを出発して約4時間でアラウシ市に到着する。ここはリオバンバ発の屋根に乗れる列車が停車する事が有名だ。この町の近くにあるレストランで約30分の休憩。どのバスもここで休むようだ。私も昼食代わりにビスケットを買う。座席に戻ると私の隣に座っていたおっさんが私の新聞を勝手に読んでいた。減る物じゃないので新聞を読むのは構わないがその後が問題。読み終わった新聞を私に返すのではなく自分の座席の前のポケットに挟んで私には一言もなし。本当に悪気無しで礼儀知らずの事をやる大人が多い国です。

コトパクシ山進行方向に雪を被った山が見え大きな盆地に入ったらもうすぐリオバンバだ。町が見えてくると気の早い乗客が降り口のある運転席の方へ移動を始める。バスターミナル近くに停車し人を降ろしすぐに出発してアンバト市へ向かう。既にクエンカを出発して6時間経っていた。ここからキトまで約4時間。もう半分は進んだわけだ。

リオバンバを出て少し走ると有料道路に入る。ここからは草原や畑が広がり山は遠くに見えるようになる。進行方向左側にはエクアドル最高峰のチンボラソ山も見える。40分ほど走ると正面に頂に雪を被った高い山が見えてくる。そして銀行の看板を右側に見てアンバト市に近い事を知る。更に10分走りアンバト市内へ入る。

サッカースタジアムを過ぎた辺りでバスが男に呼び止められ停車する。その男は他の長距離バスの車掌で何らかの理由で客を目的地まで運べなくなったようだ。10人以上の乗客が私の乗っているバスに乗り込んできた。通路が乗客で埋まる。車掌がもっと奥へ進めと声を上げる。他のバスは何事も無く走り去った。一体何だったのだろうか? バスはアンバト中心部は通らず再び北へ向かう。

ラタクンガ車掌が新しく乗ってきた乗客から運賃を徴収し始める。殆どの乗客は素直に払ったがあるグループは「前のバスの車掌が運賃を二重に払わなくて良いから乗れと言われた」と主張。彼らが乗り込んでくる時に確かにこの車掌、金受け取っていたなぁ。乗客に分があったようで車掌は料金徴収を諦めたようだ。でも他の人達は何も文句を言わないで払ったのは何故???

出発してから8時間でコトパクシ州の州都ラタクンガの脇を通り過ぎる。ここら辺から右側にコトパクシ山が良く見えるようになる。バスは更に進みキトと海岸地方へ下る分岐点を通り過ぎガソリンスタンドへ入り給油。ここまで来たらキトまであと少しだ。

キト車窓から斜面にぎっしり家が立ち並ぶ光景が見えたらそこはキトだ。キトは非常に細長い町なので旧市街にあるバスターミナルまではあと少し走らなければならない。トローレ連絡バスのバス停を通り過ぎ青い市バスを抜かし坂を上り下りしながらクエンカから来たピンクのバスはバスターミナルへ向かう。パネシージョのビルヘン(女神像)が見えたら本当にもうすぐだ。バスターミナルへ到着する少し前に車掌が乗車券を回収に来る。キトのバスターミナルへは予定通り10時間で到着。そして私はバスを降り座りすぎて少し痛くなった尻を叩いてほぐしながら市中心部へ向かったのである。

クエンカ・キト バスの旅

エクアドル地図 キトは北部にあるエクアドルの首都。クエンカは南部の主要都市。(左地図参照) これらの都市を移動する場合、飛行機(45分:US49ドル〜)かバス(9〜10時間:US10ドル〜)を使用する。

Pana Americanoという会社が最も快適で速いといわれている。このバスはテルミナル発ではなく会社のオフィスから出発する。キトはアベニーダコロンとフアンレオンメーラの近く、クエンカはバスターミナルの南にオフィスはある。出発は夜だけなので注意が必要。

バスターミナル発は朝と夕方に出ているバスが多い。

トップページ -> エクアドル旅行記 -> 旅行記一覧


inserted by FC2 system