外房線を大原駅で降り、急いで改札を出る。右を向くと黄色い車両が見える。これから乗るいすみ鉄道の車両だ。今日はいすみ鉄道と小湊鉄道を乗り継いで大原から五井まで電車で房総半島を横断しようと思う。
当初、五井からスタートする予定だったのだが総武線が遅れたので乗り継ぎがうまく行かずそれなら五井から帰った方が電車の本数が多いだろうと大原まで来てしまった。外房線は蘇我を過ぎると特急が優先され、各駅停車は駅での待ち時間が多くなる。房総は田舎だなぁ。
いすみ鉄道の大原駅は始発（終点）にも関わらず改札がなく、駅員もいない。経営が厳しいと聞いていたがその影響か。車両は黄色が基調で下部に緑の線が引かれている。横にはムーミンのキャラクターが描かれている。その他社内にはムーミンのスタンプが置かれていたり、みやげ物屋でムーミングッズを売っているとのこと。公式ホームページには世界で唯一のムーミン列車らしい。なぜムーミン？？？
定刻通り一両編成の汽車は大原駅を出発した。菜の花の季節だからか乗客は多く立っている乗客がほとんどだ。列車は沿線に断続的に続く黄色いお花畑を抜けて進む。所々にカメラを構えた人がいる。汽車は彼らに気遣いなんかしないで速度も落とさずさっさと通り過ぎる。車内からも車窓からの風景を残そうとシャッターをカシャカシャ切る音が聞こえる。いい景色だなと思っても止まってはくれないのでとにかくシャッターを切る。そして数多くの失敗作が生まれるのだな。。。
汽車は駅で止まり、人を乗せ、また駅で止まり、人を乗せたり降ろしたりを繰り返し進んでいく。途中、菜の花が綺麗に咲いている駅で私は汽車から降りた。どうやら城見が丘駅というらしい。駅の掲示板に旅行読売の三月号の表紙の写真とこの写真はこの駅の近くで撮影された旨が書いてあった。ここで降りる人が何人かいたのはそのせいだろうか。
菜の花を撮りつつ車内で少し話をしたおばさまと世間話をしながら駅の近くを歩き回った。このおばさまは趣味で友達と写真をやっているらしい。フィルムカメラを使っていてそろそろデジタルに変えるか迷っているとか。フィルムもいいし近くに写真の友達がいるのもいいな〜と思いながら話を聞いていた。おばさまは次の列車で行ってしまったが私はその次の列車で先へ。いい感じの写真が撮れたと喜んでいたが家に帰ってPCのディスプレイで見たらピント合ってなかったり、手ぶれしていたり、、、まぁいつものことですわ。
大多喜駅で列車が止まり係員が房総半島横断乗車券が欲しい人を聞いてくるので手を挙げる。房総半島横断乗車券とは五井-大原間の小湊鉄道といすみ鉄道を横断するためのお得な切符で、後戻りはできないが途中下車はいくらでも可能で一日限り有効の切符。値段は一六〇〇円。（普通に乗ったら二〇七〇円。2010年3月時点）後にも先にもいすみ鉄道の駅で駅員がいたのはこの駅だけだったようだ。
途中、東総本駅の菜の花が綺麗だったので途中下車しようと思ったのだけれどあまり時間がなかったのでそのまま通過。次に来る時はここで降りよう。そして列車は終点の上総中野駅へ。列車を降りたら先ほど会ったおばさまと再会。どうやら私の乗ってきた車両で大原まで戻るらしい。また縁があればどこかで！
次に小湊鉄道の電車が来るのは一時間後。東総本駅で降りて、一本あとの列車に乗っていれば丁度良い時間で乗り継ぎができたじゃない！やはり時刻表を持ってこなかったのが失敗か。次は印刷してこよう・・・
上総中野駅付近を少し歩いてみたが見どころは何もなく仕方ないので駅へ戻ってぼーっとしていた。駅には作業着姿のおじさんがいて熱いほうじ茶を出してくれた。ほうじ茶の入った電気ポットが調子が悪いのか、お茶を入れすぎなのか十数分の間に二回も湯気放出口からお茶が吹きこぼれていたのは印象に残った。
やっと次のいすみ鉄道の車両が到着し、それから待つこと数分で小湊鉄道の二両編成の汽動車が上総中野駅へ入線する。上三分ノ二が肌色で残りが朱色と落ち着いた色合い。形からなんだか懐かしい感じがした。
そして発進。車内は横向きシートが配置され、天井には古ぼけた扇風機が据え付けられている。いすみ鉄道の車両と比べると広い。上総中野を出たときは二両目の最後部が車掌室だったのに次の養老渓谷駅あたりで車掌が空いていた扉を閉めて一両目の最後部が車掌室に早替わり。面白い造りだ。車掌はブルーの制服を着て、社内精算用にがま口を首から下げ、車内精算券の束を持って歩いている。昔はよく見た姿だったが最近は見かけなくなったなぁ。
小湊鉄道では途中下車をせず乗ること約一時間、終点の五井駅に着く。余韻に浸る間もなくJRに乗り換え家路へつく。千葉に住んでいるけれどいすみ鉄道と小湊鉄道に乗るのは初めてだった。乗り継ぎが悪いのは残念だけれど景色が良いし、懐かしい感じが心地良いのでまた行きたいなぁ。次は桜か紫陽花の季節に行こうかな。
